Friday, July 23, 2010

パターン祭り2010 招待講演「学習パターン」(3)


僕ら教員が大学のカリキュラムをつくるというのは、こういうふうに学んだらいいよ、ということを決めて、示すことです。そして、制度として枠をはめる。このようなカリキュラム制作者というのは、ある種、建築家のような存在と言えます。個々の「建物」が個々人の「学び」、「まち」が「学びのコミュニティ」だと考えれば、わかりやすいでしょう。カリキュラム制作者というのは、建物とまちを設計するのに似ているところがあります。どちらも、そこで起こる出来事を誘発する環境を設計することです。まちづくりの場合と同じように、そこで活動する学生は多様なので、その多様性を認めつつ、全体としてまとまりのあるデザインをする必要がある。

僕らの学部、慶應義塾大学SFCでは、1年生から4年生まですべての学生が自分の好きな科目を履修することができます。学年や専攻の縛りがないんです。いわゆる理系の科目から文系の科目まで、非常に多くの科目が提供されていて、そのなかから、そのときどきの自分に必要な科目を選択・履修していきます。このようなカリキュラムにおける学びを支援するには、いろいろな方法が考えられます。たとえば、「この科目とこの科目をセットで履修するといいよ」というような「定食メニュー」を提示する方法があるでしょう。でも、僕は、この方法は学ぶ人の思考を奪ってしまうので、あまりよくないと考えています。

それではどうすればいいのか。少し抽象的に考えて、「学び方」を学ぶ支援をするということはできないだろうか。そういうことを考えて、パターン・ランゲージでいこう、ということにしました。このパターン・ランゲージによる方法は、間接的な支援なのですが、直接的で思考停止を生むよりもよいと考えました。少なくとも実験的に導入する価値はある。

それでは、ここで、「学習パターン」というパターン・ランゲージが、どのようなものなのかを、紹介していくことにしましょう。この冊子『Learning Patterns』には、僕らが考えた40個の学びのパターンが書いてあります。この40個は構造化されていて、1個、3個、36個で、合わせて40個という構造になっています。トップレイヤーの1個が全体を包括し、次のレイヤーの3個がその下の36個を束ねている、というかたちになっています。

さて、いくつかのパターンを具体的に紹介しましょう。
「まずはつかる」(学習パターンNo.7)。まずはつかってみて、どっぷりつかって、そこから始めるんだよ、というパターンですね。

「「まねぶ」ことから」(学習パターンNo.8)。「学び」という言葉は、「まねる」という言葉から来ていて、「まねぶ」ということです。「まねぶ」ことから、型を得て、そうして初めて型破りができるようになる。

「アウトプットから始まる学び」(No.13)。これは、インプットして最後に応用する、という旧来型の順番ではなく、まずなにがしかのアウトプットした上で、その経験を振り返り、自分が知らなかったこと、うまくできなかったことを学んでいく、というやり方です。

「学びの共同体をつくる」(No.28)。これは、「学び」というと、個人的な営みのように考えがちだけれども、複数人で学ぶことのメリットもある、という話です。

「「書き上げた」は道半ば」(No.35)。これは、「できたー!」と思った瞬間は、実はまだ半分で、そこから今度は読者にとって読みやすくなる文章にするための推敲が始まる、ということです。書きあげた段階をゴールとして設定してしまうと、締切の時にはまだ道半ばだった、というまずい事態になってしまう。実はこのパターンは、井庭研でこれまでに幾度となく言及されてきたパターンです。

「ゴール前のアクセル」(No.36)。人間という生き物は、ゴールに近づいて達成しそうになると、脳がブレーキをかけるんですね。行き過ぎないように。そうすると、ゴール前で前に進めなくなって、間際で達成できない、ということがしばしば起こります。そうならないためには、ゴールが近づいてきた段階で、次のゴールを設定し、今のゴールを通過点として捉え直すことで、今のゴールを減速することなく達成・通過できる、ということが知られています。


学習パターンには、このような具体的な学びのコツが書かれています。コツといっても様々なレベルのものがあって、学び始めの段階から、何かを生み出すという段階のものまであります。この冊子『Learning Patterns』には、こういうパターンが40個収録されているんです。


Tuesday, July 20, 2010

パターン祭り2010 招待講演「学習パターン」(2)

今日の講演では、学習パターンとはどういうもので、それがどのようにつくられたのかをお話しするのですが、その前に少しだけ触れておきたいのが、「アレグザンダーと老子」という話です。こういう話に深入りすると「地雷を踏むよ」と、親切なアドバイスを先ほどいただいたので少しだけにしようと思いますが(笑)、お話ししたいと思います。
なぜ、アレグザンダーが老子の影響を受けているという話から始めるのかというと、パターン・ランゲージという手法が単なる「ノウハウ」を記述する一手法だと思われがちだという背景があります。僕の考えでは、パターン・ランゲージは単なる手法なのではなく、その背後にある思想・哲学がとても重要だと思うのです。


パターン・ランゲージの考え方を生み出したクリストファー・アレグザンダーが、実際にどのように老子や「タオイズム」に影響を受けたのかはわかりませんが、僕のみるところでは、かなり影響を受けている。例えば、パターン・ランゲージのカタログの中に、こういう絵が出てくるんですね。これは、まさにタオでいう「陰」と「陽」の図ですね。もちろん、『時を超えた建設への道』の原題である『The Timeless Way of Building』の“Way”というのは、「道」であり「タオ」(Tao)のことです。その本のなかにも、「門」(Gate)という言葉が出てくるし、書かれ方そのものが、老子から強い影響を受けているように見える。これは単に、表面的な類似性の問題ではなく、パターン・ランゲージがもっている思想・哲学につながっている点に注目したい。
そこで、まず老子がどういう状況で何を考えたのか、ということから振り返ってみたいと思います。老子が生きた時代というのは、孔子たち賢者・儒家の時代で、鉄の登場によって農業や戦争のやり方、そして国の治め方が激変した時代です。つまり、人間の力の及ぶ範囲や規模が拡大し、人為による統治が重視された時代だったわけです。そのような時代に、人間にできることにはかなりの限界があるから、人為による統治なんてむしろ世の中を混乱させるだけだ、と老子は言うわけです。そして、人為によるのではなく、もっと自然がもつ「自ずと然る」力を重視すべきだ、というわけです。「自然」という言葉は「自ずと然る」と書きますね。老子は、。ね、essお。ね、essそういう自然の宇宙造化の営みを重視して人間は生きていくべきだ、と考えたんですね。
孔子を始めとする当時の主流の考え方は、「主体性」を重視し、理性で考えることを推奨していました。孔子、賢く生きるためには具体的にこうすべきだという具体的な《道》を示したわけです。これに対して、老子は、そういう具体的な《道》ではなく、より大きな全体としての自然の力としての「道」を唱えました。孔子のように具体的にああしろ、こうしろ、とは言わないわけです。そういう具体的なことをいう《道》ではない「道」を説いたんですね。ここが、老子の思想・哲学の重要なポイントです。


ここでいう「道」は、英語では“Way”(大文字のWで始まる)と訳されたり、“Tao”と訳されたりしますが、どちらにしても、老子がいう“Way”=“Tao”というのは、永久不変、つまり“Timeless”なものです。アレグザンダーの『The Timeless Way of Building』のタイトルに“Timeless”や“Way”という言葉が入っているのは、単なる偶然の一致ではなく、思想・哲学的なつながりがあることを示していると言っていいでしょう。
また、アレグザンダーの『時を超えた建設の道』には、「名づけ得ぬ質」という言葉がでてきます。これも老子の考えに通じる考え方です。名前をつけられるようなものは、識別できるものであるわけですが、逆に言えば、区別し識別できないものは、名づけることができない。老子は、我々が触知可能な世界の背後にある宇宙造化の営みのことを“Way”と呼んだのであり、それは本来識別したり名づけたりすることができないものです。本来は名づけ得ぬものであるものを、あえて“Way”と名づけた。


「理解しないように道を理解せよ。」———これは老子の言葉ですが、こういう言い方がいかにも象徴的で、逆説的なあるいは循環的な記法で書かざるをえないような対象を捉えようとしています。わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない、というような書き方になっている。実はこのことは、老子だけでなく、アレグザンダーにも言うことができる。パターン・ランゲージが捉え・記述しようとしたものも、まさに「名づけ得ぬ」ものです。


実際、パターン・ランゲージで書かれていることは、経験していれば生き生きと理解できるけれども、経験がなければ理解が難しい、という一面がある。このあたりからも、パターン・ランゲージというのは、単に暗黙的な「ノウハウ」を、この形式で書けば、伝達可能性が高まりますよ、というような話ではないことがわかると思います。パターン・ランゲージというのは、本当は記述できない、名づけ得ぬ「自ずと然る」全体性を、あえて記述するという試みなのです。

今日の話のメインは、この部分ではないので、そろそろ学習パターンの話に戻りましょう。学びというのは、本来は自ずと成長していくという事態をさして、そういうわけですね。それを、教育方法論ということになると、「こうやれば上手くいく」といった「型」を外からあてがって、はめ込む、というような話になりがちです。学習パターンが目指す世界というのは、そういう外からの押しつけの、人為による学びの統治ではないんですね。そうではなく、自分たちで自分たちの学びをデザインし、実践する。各人が「自ずと然る」ように学ぶには、どうしたらよいのか。そして、さらにいうと、各人がそのように学ぶことが、学びのコミュニティを活性化し、かたちづくることになる。そういうことを支援するためのメディア、言語をつくること。これが、学びのパターン・ランゲージとしての「学習パターン」の使命である。僕らは、そう考えています。

Source: 「パターン祭り:AsianPLoP2010の報告と展望」招待講演(2010年6月19日、早稲田大学西早稲田キャンパス)
Edit: 講演・加筆修正:井庭 崇, 文字起こし:坂本 麻美

Monday, July 19, 2010

パターン祭り2010 招待講演「学習パターン」(1)

しばらく更新が滞っていた、この「学習パターン ブログ」ですが、久々に再開したいと思います。先日、「パターン祭り2010」というイベントで、学習パターンの制作プロセスを話す機会がありました。そこで話した内容を連載していきたいと思います。基本的には、講演で話した流れのままですが、文章で読んだときに読み物として成り立つように、大幅な加筆修正をしています。


2010619日、早稲田大学西早稲田キャンパス)

招待講演「学習パターン 〜学びのパターン・ランゲージ〜
(井庭 崇 + 学習パターンプロジェクト)

こんにちは、井庭です。今、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)で教員をしておりまして、今回紹介させていただく「学習パターン」(Learning Patterns)というパターン・ランゲージを作成しました。この「学習パターン」は、学生の学びの支援に、パターン・ランゲージの方法を活かせないかということを考えて2008年に制作し、2009年からオフィシャルなガイドブックとして約3600人の学部生に配っている、というものです。
 あいにく、配布した年度に私がサバティカルで海外に行ってしまったので、普及の方が今一歩進んでいないという現状でして、そのあたりを今後注力して進めていきたいと思っています。ただ、この「学習パターン」は、Twitter等を通じて、学外の方からもかなりの反響があったので、そういう方々にも使っていただけるように、一部の内容を一般化して、この白い冊子のバージョンもつくりました。

学習パターンをつくったのは、ひとりひとりが「自らの学びをデザインする」ということを支援したかったからです。「学び方」というのは試行錯誤のなかで身につけていくものだと思いますが、その試行錯誤を何らかの方法で支援することができないか。学習者の“How to Learn”ということを学びながら何かを学ぶ、という複雑な事態に対して、それを下支えするメディアをつくることはできないだろうか、そう考えたわけです。

僕ら教員が学生に学んでほしいことというのは、必ずしもすぐに使える知識やスキルということだけではなく、今後生きていく何十年もの間に、自分で学んでいける力をつけることだと思っています。私たちの生きている世界/社会はどんどん変化する。そのような変化のなかで、さらなる知識を身につけ、スキルアップをはかることができるような、そういう力をつけてほしいと思っている。そうであるからこそ、「学び方」というものを、なんとかして伝えることはできないか。その難問に挑むのが、「学習パターン」の試みなんです。

本題に入る前に、ひとつだけ、注意を促しておきたいのは、「学習パターン」を「教育」のパターンだと思われる方が多いのですが、僕は、「学習=学び」は「教育されること」とは違う、と思っています。“learning”と“education”は、セットで語られることが多いのですが、学びは、教育がなくても、成り立つ。つまり、「自分で学ぶ」こともできるわけです。教育は、学びを促す一つの手段にすぎない。このことは、本質的に重要です。学習パターンは、教育とか教授法のパターンではなく、1人ひとりの人が「学ぶ」ことを支援するパターン・ランゲージなのです。この点は、強調しておきたいと思います。

……つづく。

(講演・加筆修正:井庭 崇, 文字起こし:坂本 麻美)

Tuesday, December 8, 2009

作成物語#1 学習パターンの目的を考える(2008年5月28日)

学習パターンプロジェクトは、2008年5月に始動した。プロジェクトの構成メンバーは、井庭研究会の有志の学生たちである。実は、学内でメンバーの公募をしたのだが、パターン・ランゲージとは何かということがうまく伝わらなかったためか、ほとんど反応はなかった。そのため当初プロジェクトの立ち上げは難航したが、最終的には、パターン・ランゲージの研究の経験があるメンバーを中心として、井庭研のメンバーが7人ほど関わることになった。各メンバーは、自らの個人研究を抱えながらも、この活動に参加していくことになる。

手元にあるログのなかで最も古い 2008年5月28日の活動から見ていくことにしよう。この日の参加者は、加藤 剛、小林 佑慈、青山 貴行、吉田 真理子、下西 風澄、水野 大揮である。井庭は、学生たちの自発的な活動が望ましいと考え、この段階の議論には参加していない。かわりに、大学院生の西田 亮介がサポートとして参加した。

この日は、学習パターンの目的について議論し、次の3つの目的があるという結論に達した。

(1)創発的でダイナミックな科目編成・履修を目指し、既存の学問分野を超えた自分らしい問題意識(研究)を発見させる
(2)カリキュラムにおける教員の意図と学生の認識のギャップを埋める
(3)抽象的な学問論と具体的な科目群の間をつなぐ

そして、学習パターンの対象が誰なのかについても話し合われた。結論としては、新入生のみならず、SFCの学生全員が対象だということになった。SFCにはやりたいことに没頭できている人と、浅く幅広く学んだ結果深いものを得られない人、何をやりたいか分からない人など、いろいろな人がいる。しかも、やりたいことが「見えている」と思っている人も、実際には自らの問題意識から研究を選んでいるというより、研究会という与えられた枠の中での考えに終わっている人も見受けられる。そう考えると、自分の興味・関心を踏まえて研究会を選ぶということだけでなく、研究会に参加している間も自分と研究会との関係を見つめ直すことが重要となる。そのため、学習パターンは、新入生だけでなく、全学年の学生が使えるようにデザインする必要がある、と考えたのである。

以上を踏まえた上で、まずは、(2)カリキュラムにおける教員の意図と学生の認識のギャップを埋める、に注目して、話し合いが展開されることになる。

Monday, December 7, 2009

作成物語#0 カリキュラム委員会への提案

学習パターンがいかにしてつくられたのかを語るにあたり、今回は、学習パターンの作成に至る経緯を紹介したい。


学生の学びの支援のために「パターン・ランゲージ」を用いる、というのは井庭 崇(慶應義塾大学総合政策学部専任講師)の発案である。当時カリキュラム委員であった井庭は、学生の履修のナビゲーションの仕組みをつくる担当だった。ここで、なぜ学習パターンのような新しいタイプの支援が必要だと考えたのかは、SFCのカリキュラムの特徴に密接に関係している。


最終的に出来上がった「学習パターン」はSFC外にも通用する一般的なものになったが、パターン・マイニングとパターン・ライティングのプロセスを振り返ると、SFCという具体的な対象を想定したという点は非常に重要なことだと思われる。そこで、以下では、SFCカリキュラムの特徴について説明しておくことにしたい。キーワードとなるのは、「研究プロジェクト中心」と「学年にとらわれない科目履修」である。

SFCでは「研究プロジェクト中心」というスローガンのもと、学生は学部1・2年生の段階から、興味・関心に応じた「研究プロジェクト」(科目では「研究会」という場が提供されている)に参加し、その知的活動を中心として学びを構成することが奨励されている(ここでいう「研究」とは、いわゆる学術研究にとどまらず、社会的活動や芸術的な制作も含まれている)。通常の大学・学部であれば、低学年のうちは教養科目を履修し、3年生もしくは4年生になって研究室に所属して卒論を書く、というのが一般的だろう。しかし、そのような基礎→応用というパスではなく、「最初から実践的コミュニティに所属しながら学ぶ」というのが、いまのSFCの特徴なのだ。その意味で、アウトプット志向の学びが目指されているといえる。


そして、「研究プロジェクト中心」の方針を支えるカリキュラム上の仕組みが、「学年にとらわれない科目履修」である。研究活動に必要な知識やスキルは、自分にとって適切なタイミングで学ぶことが望ましい。何に使えるかわからないのに将来のためにただ学ぶというのではなく、興味・関心や必要性に応じて学ぶ。そのためには、科目は学年で縛られていてはならない。だから、科目履修の条件から学年という要因は排除されている。誰もが必要なときに必要なものを学べるという環境を、SFCは制度としてつくっているのである。


すべての学生に、このような自由度が与えられているからこそ、学生が「自らの学びをデザインする」コツをいかにして獲得するのか、という問題に取り組まなければならない。たしかに、放っておいてもできる学生はいる。しかし、どうやればよいかわからず悩む学生も少なからずいる。そのため、「研究メンター制度」等がセットで提供されていて、試行錯誤を手助けするようになっている。


このような制度があった上でも、井庭が依然として足りないと考えたのが、学びをデザインするための「言語」であった。従来のような学年進行のカリキュラムであれば、教員が考えたレールに乗って進んでいけばよい。しかし、SFCでは学生自身が自らの学びをデザインすることが不可欠である。そのため、学びについて「考える」ための手段、「語り合う」ための手段 –––– 「思考・コミュニケーションのビルディング・ブロック」といってもいいだろう –––– が不可欠であると考えたのである。


そのような言葉/ブロックを組み合わせながら、ああでもない、こうでもないと考えたり、語り合ったりすることを支援する。しかも、学生の多様性に対応でき、学生自身の創造性を削がないかたちで言語化することが大切だ。このような問題意識のもと、学びのコツをパターン・ランゲージによって記述するという発想に至ったのである。


そこで井庭は、カリキュラム委員会において、パターン・ランゲージの考え方にもとづく「学習パターン」の制作・配布について提案した。以下は、2008年初旬に委員会に提出した資料からの抜粋である。



学習パターンのカタログ配布

学生の多様な状況・将来像に合わせて適用できるようにするように、「身に着けたい能力」と「そのための学習・履修計画案」をパターンとして記述。

● 学習パターンは、次の3つのレベルのものを設定する。

・「将来像につながる包括的なパターン」(マクロ):科目20個程度
・「目的に応じた能力向上のためのパターン」(メゾ):科目5~10程度
・「履修方法に関するパターン」(ミクロ):履修順序などのコツ


(中略)

【補足】 「学習パターン」(Study Patterns)とは

● 「身に着けたい能力」と「そのための学習・履修計画案」をセットで提示する。

● 問題解決の支援手法「パターン・ランゲージ」の考え方(後述)を援用している。
→ 以下で用いる「パターン」という言葉は、単なる「模様」「規則性」という意味ではなく、「当該分野で頻出する問題(目的)と解決の組み合わせ」という「パターン・ランゲージ」特有の意味で用いる。

● 学生の多様な状況・将来像に合わせて適用できるようにする。

● 学習パターンでは、次の3つのレベルのものを設定する。


・「将来イメージにつながる包括的なパターン」(マクロ)
・「能力向上のためのパターン」(メゾ)
・「履修方法に関するパターン」(ミクロ)

● どの状況における、どのような問題・目的のための情報なのかが明記されるため、学生の選択が行いやすい(バージョン2.0のクラスターとの差異)。

● 学習パターンは、基本的には以下のような情報が盛り込まれている。





これらのパターンが組み合わさって、ひとつの体系をつくる。これが、学習を支援するパターン・ランゲージとなる。

● 学習パターンには、その内容から3つのレベルがあり、それらは相互に関連している。




(中略)

パターン・ランゲージは、いわゆる「マニュアル」とは異なります。パターン・ランゲージでは、唯一の答えが提示されるのではなく、代替的な選択肢も示されます。また、小さな単位でまとめられており、ユーザーがそれらを取捨選択して、自分の状況に合わせて考えることが求められます。つまり、ユーザーの主体的で創造的な意思決定を尊重する方法なのです。このように、パターン・ランゲージの方法では、単に個人の能力やセンスに任せるだけという無責任は方法ではなく、過去の先人の知恵・経験を踏まえて記述されたコツを活かしながら、個々人の能力やセンスをも許容するような方法が実現できます。履修ナビゲーションにおいては、多様な興味・関心をもつ学生の主体的な選択を支援することが重要となるため、この方法が適していると考えます。



この抜粋をみてわかるように、「パターン・ランゲージによる支援」ということは掲げられているが、この段階(2008年1〜3月)で想定されていたパターンの内容は、最終的に「学習パターン」としてまとめられたものとは、まったく異なるものであった。ここでイメージされていたのは、SFCのカリキュラムに強く特化したパターンであり、「学び」のコツというよりは「科目履修」のコツであった。また、将来像をベースとしたモデルケースを提示するというのに近い。「学習パターン」の訳語として、現在のような「Learning Patterns」ではなく、「Study Patterns」をあてているというのも、この段階での方向性を象徴的に表している。


当初のアウトプットイメージがこうであった以上、この後すぐに立ち上げられる「学習パターンプロジェクト」は、この方向性にもとづいて進められることになるのである。これが、学習パターン作成の出発点であった。

Sunday, December 6, 2009

学習パターンの現状(2009年12月現在)

学習パターンの作成物語に入る前に、学習パターンの現状について、簡単にまとめておくことにしよう。

学習パターン(Learning Patterns)は、もともとは、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)にある総合政策学部と環境情報学部、政策・メディア研究科で学ぶ学生を支援する目的で作成されたものである(これらの学部・研究科には、合わせて約4千人の学生が在籍している)。

2009年4月には、新年度・新学期の公式な学事配布物として、学習パターンの冊子『Learning Patterns: A Pattern Language for Active Learners at SFC 2009』が配布された。A5サイズの黒い表紙の冊子で、見開き2ページに1パターンずつ掲載されている。




この冊子には、学習パターン・カタログのほかに、「科目履修と学習パターン」や「SFCらしい学びのための文献案内」という内容も含まれている。「科目履修と学習パターン」では、SFCカリキュラムの科目群別に、どの学習パターンが深く関係しているかがまとめられている。「文献案内」では、私たちのおすすめの文献を掲載した。

2009年4月中旬には、学習パターン ホームページの公開が始まった( http://learningpatterns.sfc.keio.ac.jp/ )。このサイトでは、上記冊子のPDFファイルがダウンロードできるほか、パターン名とイラストによる一覧ページや、関連パターンへのリンクなど、Webならではのナビゲーションが加えられている。



2009年9月から、Twitterによる学習パターンの配信を開始し、毎日ひとつずつ学習パターンを紹介している( http://twitter.com/LPattern )。12月6日現在では、480人にフォローされている。



上述のSFC配布版では、No.1からNo.3のパターンが、SFCに特化したパターンになっている。具体的には、No.0の「学びのデザイン」を特徴づけるかたち(構造)で、No.1「SFCマインドをつかむ」、No.2 「研究プロジェクト中心」、No.3 「SFCをつくる」がある。そして、この3つのパターンこそが、学習パターンとSFCを結びつける役割(機能)を担っている。



しかし、この3つのパターン以外の学習パターン(37個)は、SFC学外の人にも十分通じる内容になっている。このことには、私たちも作成段階から気づいていたが、まずはSFC版をつくる、ということに専念していた。ごく最近、その3つのパターンを一般向けに置き換えたバージョンを作成した。

2009年11月下旬に開催されたSFCの研究公開イベント Open Research Forum (ORF) 2009では、No.1〜No.3のパターンを一般向けに変更して収録した冊子『Learning Patterns: A Pattern Language for Creative Learners 2009』を配布した。SFC版同様にA5サイズだが、今度は表紙の色は白。冬バージョンということで Snow White Edition と呼んでいる。



この冊子では、SFCに特化していた3パターンが、No.1 「学びのチャンス」、No.2 「創造的な学び」、No.3 「学びをひらく」に置き換えられている。



現在は、各パターンに、帰結(Consequence)という項目を加える拡張を行っている。これは、パターンを適用したときに想定されるポジティブや帰結と、副作用として考えられるネガティブな帰結について説明するという項目である。そして、英語版冊子の作成に向けて、翻訳作業も進めているところだ。以上が、学習パターンについての現状である。

Saturday, December 5, 2009

パターン・ランゲージと学習パターン

学習パターンは、「パターン・ランゲージ」(Pattern Language)という考え方にもとづいてつくられています。パターン・ランゲージは、建築家のクリストファー・アレグザンダーが提唱した知識記述の方法です。アレグザンダーは、建物や街の形態に繰り返し現れる法則性を「パターン」と呼び、それを「言語」(ランゲージ)として記述・共有する方法を考案しました。彼が目指したのは、街や建物のデザインについての共通言語をつくり、誰もがデザインのプロセスに参加できるようにすることでした。

パターン・ランゲージでは、デザインにおける多様な経験則をパターンという単位にまとめます。パターンには、デザインにおける「問題」と、その「解決」の発想が一対となって記述され、それに名前が付けられます。パターン・ランゲージの利用者には、自らの状況に応じてパターンを選び、そこに記述されている抽象的な解決方法を、自分なりに具体化して実践することが求められます。

パターン・ランゲージを記述・共有する意義は、大きく分けて二つあります。一つは、熟練者がもつ経験則を明文化しているので、初心者であっても、洗練されたやり方で問題解決ができるようになるという点です。もう一つは、デザインに関する共通の語彙(ボキャブラリー)を提供するので、これまで指し示すことができなかった複雑な関係性について簡単に言及できるようになるという点です。

このようなパターン・ランゲージの考え方は、建築の分野以外でも、ソフトウェア開発を始めとして、インタラクション・デザインや組織デザイン、教育のデザインなどに応用され始めています。パターン・ランゲージの考え方は、実践知を共通言語化する方法として、今後もいろいろな分野へ応用されると考えられます。

「学び」の実践知をパターン・ランゲージとして記述したのが、学習パターンです。学習パターンは、世界で初めての「学び」の支援のためのパターン・ランゲージなのです。