しばらく更新が滞っていた、この「学習パターン ブログ」ですが、久々に再開したいと思います。先日、「パターン祭り2010」というイベントで、学習パターンの制作プロセスを話す機会がありました。そこで話した内容を連載していきたいと思います。基本的には、講演で話した流れのままですが、文章で読んだときに読み物として成り立つように、大幅な加筆修正をしています。
(2010年6月19日、早稲田大学西早稲田キャンパス)
招待講演「学習パターン 〜学びのパターン・ランゲージ〜」
(井庭 崇 + 学習パターンプロジェクト)
(井庭 崇 + 学習パターンプロジェクト)
こんにちは、井庭です。今、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)で教員をしておりまして、今回紹介させていただく「学習パターン」(Learning Patterns)というパターン・ランゲージを作成しました。この「学習パターン」は、学生の学びの支援に、パターン・ランゲージの方法を活かせないかということを考えて2008年に制作し、2009年からオフィシャルなガイドブックとして約3600人の学部生に配っている、というものです。
あいにく、配布した年度に私がサバティカルで海外に行ってしまったので、普及の方が今一歩進んでいないという現状でして、そのあたりを今後注力して進めていきたいと思っています。ただ、この「学習パターン」は、Twitter等を通じて、学外の方からもかなりの反響があったので、そういう方々にも使っていただけるように、一部の内容を一般化して、この白い冊子のバージョンもつくりました。
学習パターンをつくったのは、ひとりひとりが「自らの学びをデザインする」ということを支援したかったからです。「学び方」というのは試行錯誤のなかで身につけていくものだと思いますが、その試行錯誤を何らかの方法で支援することができないか。学習者の“How to Learn”ということを学びながら何かを学ぶ、という複雑な事態に対して、それを下支えするメディアをつくることはできないだろうか、そう考えたわけです。
僕ら教員が学生に学んでほしいことというのは、必ずしもすぐに使える知識やスキルということだけではなく、今後生きていく何十年もの間に、自分で学んでいける力をつけることだと思っています。私たちの生きている世界/社会はどんどん変化する。そのような変化のなかで、さらなる知識を身につけ、スキルアップをはかることができるような、そういう力をつけてほしいと思っている。そうであるからこそ、「学び方」というものを、なんとかして伝えることはできないか。その難問に挑むのが、「学習パターン」の試みなんです。
本題に入る前に、ひとつだけ、注意を促しておきたいのは、「学習パターン」を「教育」のパターンだと思われる方が多いのですが、僕は、「学習=学び」は「教育されること」とは違う、と思っています。“learning”と“education”は、セットで語られることが多いのですが、学びは、教育がなくても、成り立つ。つまり、「自分で学ぶ」こともできるわけです。教育は、学びを促す一つの手段にすぎない。このことは、本質的に重要です。学習パターンは、教育とか教授法のパターンではなく、1人ひとりの人が「学ぶ」ことを支援するパターン・ランゲージなのです。この点は、強調しておきたいと思います。
……つづく。
(講演・加筆修正:井庭 崇, 文字起こし:坂本 麻美)
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